退去後のリフォーム、どこまで手を入れるべきか|費用対効果と判断基準
2026.04.26
前回のnoteでは、退去立ち会いの大切さについてお話ししました。
退去立ち会いが終わると、次に考えなければならないのは、次の入居者さんを迎えるためのリフォームです。
ここで悩むのが、
「どこまで直したらいいのか」
「どこまで新しくしたらいいのか」
ということではないでしょうか。
これは一概には言えません。
お部屋の傷み具合によっても違いますし、築年数によっても違います。また、間取りや賃料帯、立地によっても判断は変わってきます。
傷みが少ないお部屋であれば、基本的には元の状態に戻すだけで十分な場合もあります。
ただ、築年数が古い物件の場合は、たとえきれいに原状回復をしても、どうしても古さが目立ってしまうことがあります。
水回りは、清潔感が第一

特に内覧の時に目に入りやすいのが、水回りです。
キッチン、洗面台、浴室、トイレなどは、清潔感がとても大切です。水回りが古ぼけて見えたり、清潔感に欠けて見えたりすると、それだけでお部屋全体の印象が下がってしまいます。
では、水回りはいつ頃を目安に交換すればいいのでしょうか。
もちろん、壊れている箇所や大きく傷んでいる箇所があれば、そのタイミングで交換を考えることになります。当社の考えとしては、ひとつの目安は築30年頃だと考えています。
ただし、水回りを交換すれば、必ず大きく賃料が上がるというわけではありません。
賃料帯が高い物件であれば、設備を新しくすることで、さらに賃料を上げられる可能性があります。一方で、もともと賃料帯が低い間取りや、郊外の物件などでは、水回りを豪華にしても、その分を賃料に大きく反映させることは難しい場合があります。
そのような物件では、無理に大きな費用をかけるよりも、まずは清潔感を保つことを優先した方がよいと思います。
水回りの費用感
キッチン:1500mmや1800mm程度のキッチンであれば、工事費も含めて60万円前後かかることもあります。
ミニキッチン:製品代と取付費を含めて30万円程度で収まる場合もあります。
洗面台:以前は、600サイズの洗面台であれば、本体が3万円程度、取付費や廃棄処分費を含めても6万円少々で交換できたこともありました。最近は資材や工事費も上がっていますので、今はもう少し高くなっているかもしれません。
浴室:必ずしもユニットバスごと交換する必要はありません。浴室塗装、シート貼り、水栓金具の交換など、印象を変える方法があります。
たとえば、古い水栓をサーモスタット付きのシャワー水栓に交換するだけでも、使いやすさと見た目の印象は変わります。
このように、水回りは「全部を新しくする」だけが選択肢ではありません。費用対効果を見ながら、どこを変えれば印象が良くなるのかを考えることが大切です。
内装は、時代の流れも見る
次に、お部屋の内装についてです。
築年数が浅い物件であれば、クロスや床を元に戻すだけで十分なこともあります。しかし、築年数が古い物件では、きれいに戻しても「なんとなく古い部屋」という印象が残ってしまうことがあります。
たとえば、建具ひとつを見ても、時代によってデザインの流れがあります。
1990年代頃の建具は、大きなガラスが入っていて、そこに格子がついているようなデザインをよく見かけました。2000年代に入ると、スリットガラスが2本、3本入ったような建具が増えてきました。
最近では、そのスリットも1本程度で、幅も細くなっています。全体的に、よりシンプルで、主張の少ないデザインが好まれるようになっていると感じます。
室内ドアも、昔は小さな小窓がついているものをよく見かけましたが、最近は窓のない、すっきりした一枚扉も多くなっています。
床材やクロスの選び方
フローリングも同じです。
1990年代頃は、幅の狭いフローリングで、メープルのような明るい色が多く使われていました。その後、幅広のフローリングや、濃い色の床材が流行った時期もありました。
最近は、ほどよい幅で、色は薄めのものを好まれる方が多いように感じます。特に若い方には、明るめで、部屋が広く見える色が好まれやすい印象です。
こうした時代の流れを踏まえて、クロスや床材を選ぶことも大切です。
クロスについては、一面だけデザイン性のあるものを使う「アクセントクロス」もよく使われるようになりました。
以前は、かなり濃い色や、柄の強いアクセントクロスも多くありました。たとえば、ブルックリンスタイルのようなレンガ調のクロスや、北欧スタイルのような個性のあるものです。
最近は、アクセントクロスも少し落ち着いてきているように感じます。
グレー、ネイビー、グレージュ、アースカラーのような、主張しすぎない色。また、モルタル調や無機質な雰囲気のものなど、部屋全体になじみやすいデザインが選ばれやすくなっています。
個性のあるクロスは、使う場所を考える

一方で、少し個性のあるクロスを使いたい場合には、クローゼットの中や押入れの中に使うこともあります。
洋服をかけたり、荷物を置いたりすると、普段はほとんど見えなくなる場所です。それでも内覧時に扉を開けた時、少し新鮮な印象を与えることができます。仮に好みが分かれる柄であっても、収納の中であれば、お部屋全体の印象を大きく左右しにくいという良さもあります。
ただ、ここでも大切なのは、流行っているから全部取り入れる、ということではありません。
アクセントクロスは、いわゆる1000番クロスと言われるものが多く、量産クロスより割高です。クロスはメートル単位で使いますので、数百円の差でも、全体では何万円もの差になることがあります。
そのため、お部屋の傷み具合、築年数、賃料帯、競合物件との比較を見ながら、どこまで手を入れるかを決めることが大切です。
リフォーム費用は、回収できる範囲で考える
当社では、築30年頃をひとつの目安に、少しずつ手を加えることを考えています。
そのため、ひとつの目安として、リフォーム費用は家賃の半年分程度に抑えることを意識しています。
もちろん、物件によって例外はあります。
大きく賃料アップが見込める物件や、長期的に価値を上げたい物件であれば、もう少し費用をかける判断もあります。
また、築30年以上の物件をフルリノベーションして売却するような場合は、考え方が少し違います。これは賃貸で毎月回収するというより、売却時の価格を上げる、いわゆるキャピタルゲインを狙う考え方です。
ただ、長期保有を前提に賃貸経営を続けていく場合には、フルリノベーションは慎重に考えた方がよいと思います。ファミリータイプの間取りでフルリノベーションをすると、300万円程度かかってしまうこともあるからです。
賃料設定とリフォーム内容はセットで考える
賃貸経営で大切なのは、内覧に来られた方が、どこを気に入ってくれるのか。そして、どこまでなら妥協してもらえるのか。
そこを考えることです。
すべてを完璧にしようとすると、費用はいくらでもかかります。でも、賃料には上限があります。
だからこそ、賃料設定とリフォーム内容はセットで考える必要があります。
競合物件は、ポータルサイトを見ると、写真や設備、条件面を確認することができます。同じエリアで、同じような広さや賃料帯の物件が、どのような内装で募集されているのか。そこを見ながら、自分の物件の立ち位置を考えることが大切です。
リフォームは、未来への投資
リフォームで一番大事なのは、かけた費用を何ヶ月で回収できるかという視点を持つことです。
・手を入れたことで空室期間が短くなる。
・少しでも賃料を上げられる。
・競合物件との差別化ができる。
そうであれば、そのリフォームには意味があります。
反対に、何も手を入れず、ずっと同じ状態のままにしていると、賃料が上がらないだけでなく、空室期間が長くなり、結果として空室損失が増えてしまうこともあります。
リフォームは、元に戻すためだけのものではありません。
次の入居者さんに選んでもらうための戦略であり、家主さんにとっては未来への投資でもあります。
だからこそ、いろいろな物件や競合物件と比較して、複数の業者さんにも見積もりをお願いしながら、予算内でどこまで手を入れるかを考えていくことが大切だと思います。
