大規模修繕は先延ばしが得とは限らない|塗料・防水材価格高騰と修繕判断
2026.05.09
今日は、大規模修繕についてお話ししたいと思います。
今、現場で起きていること
今、中東情勢の影響で、大規模修繕の現場にも影響が出ています。
実際に、足場をかけたのに工事が止まってしまっている現場もあります。
大規模修繕で使う材料には、塗料、防水材、シーリング材など、石油製品に関係するものが多くあります。そのため、原油価格や物流、海外情勢の影響を受けやすい部分があります。
足場は、かけている間もレンタル代がかかります。工事が止まれば、その分、費用負担も増えていきます。場合によっては、いったん足場を解体せざるを得ないこともあります。
当社のお付き合いのある家主さんも、秋に向けて大規模修繕の見積もりを取ろうとされていました。ところが、今の情勢では先の金額が読みづらく、はっきりした金額を入れにくいというお話があったそうです。
塗料会社さんの値上げも、すでに出ています。中東情勢が落ち着いたとしても、一度上がった資材価格がすぐに元に戻るとは限りません。
塗装会社さんも、できるだけ値上げはしたくない、できる範囲で吸収したいと考えておられます。ただ、資材が大きく上がれば、工事全体の金額にも影響します。
たとえば、資材が3割ほど上がる可能性があれば、工事全体としても1割前後上がることは十分あり得ます。
先延ばしが本当に得なのか
大規模修繕は、一般的には15年くらいを目安に考えることが多いと思います。けれども、その15年の間に何が起こるかは分かりません。人口減少による職人さんの不足もあります。
「まだ先でいい」と思っていた工事が、数年後には今より高くなっている可能性もあります。
もちろん、資金的に無理をしてまで工事をする必要はありません。ただ、建物の状態を見て、資金面でも工事ができるタイミングであれば、先延ばしにすることが本当に得なのかは、考えておきたいところです。
そして、大規模修繕は「いつやるか」だけではなく、「どこまでやるか」も大切です。
元に戻すのか、少し印象を変えるのか
大規模修繕の考え方には、大きく分けて二つあります。
・建物を元の状態に戻すこと
・修繕の機会に少し手を加えて、物件の印象を良くすること
第1回目の大規模修繕で、築年数もまだ浅い場合は、まずは元に戻すことを中心に考えてもよいと思います。
屋上に関しては、アスファルト防水かシート防水かなど、防水の種類によって工事内容も変わります。足場が不要な場合には、外壁工事とは時期をずらして行うことも可能です。
ただ、築年数が古くなってくると、ただ元に戻すだけでは少し物足りないこともあります。その場合は、大規模修繕に合わせて、共用部の印象を少し変えるのも一つの方法です。
印象を変えやすい場所
たとえば、エントランスです。エントランスは、入居者さんも、内覧に来られた方も、必ず目にする場所です。
大がかりな工事をしなくても、次のような工夫だけで印象は変わります。
・一面だけ色を変える
・一部にタイルやシートを貼る
・照明を変える
・古いメールボックスを新しくする
共用廊下も同じです。
・ウレタン塗装やモルタルの場合は、長尺シートを貼る
・玄関ドアに塗装をする
・木目調やデザイン性のあるダイノックシートを貼る
・廊下照明を新しくする
外壁に関しては、人の視線で自然に目に入りやすいのは、建物の下の方です。そのため、1階から2階あたりの印象を変えるだけでも、建物の見え方が変わることがあります。
限られた予算の中で、どこに手を入れれば印象が変わるのか。そこを考えることも、大規模修繕では大切だと思います。
見積もりと記録
業者さんを選ぶときは、できれば数社から見積もりを取る方がよいと思います。
提携業者さんと組んで工事をされる会社もあれば、ある程度自社で施工できる会社もあります。また、使う塗料や防水材によっても金額は変わります。
工事範囲、使う材料、保証内容、下地補修の考え方、報告書の有無などは確認しておいた方がよいと思います。同じ「外壁塗装」「防水工事」と書いてあっても、中身が同じとは限らないからです。
購入時にも確認したいこと
また、収益物件の中には、転売を前提に短期間で外観や共用部を整えて売り出されるものもあります。
もちろん、塗装や照明交換などの工事費は、売値に反映されます。
ただ、塗装や防水は見た目だけでは分かりません。下地補修や洗浄、乾燥、シーリング、防水層の処理など、一定の工程を踏まないと、本来の機能が十分に発揮されないことがあります。
きれいに塗られていても、その施工が確かなものかは確認が必要です。購入後すぐに剥がれやクラックが入ったり、防水の不具合が見つかったりすれば、結果として高い買い物になることもあります。
収益物件を購入するときは、見た目だけでなく、施工内容や報告書、使用材料、保証の有無まで確認しておく方が安心です。
当社が大切だと思っているのは、最後にきちんと記録を残してもらうことです。
残しておきたい記録
どこを施工したのか
どの材料・塗料を使ったのか
色番号は何だったのか
施工前、施工中、施工後の写真があるか
塗料も年数が経つと色あせます。同じような色にしたいと思っても、元の色が分からなければ迷います。
もちろん、10年後、15年後の次の修繕では、思い切って新しい色に変えるのもよいと思います。その場合でも、前回の記録があれば比較ができます。
資金の準備も含めて考える
大規模修繕は、大きなお金がかかる工事です。
今、現実に中東情勢の影響を受けている時期だからこそ、「まだ先でいい」と決めつけず、建物の状態や資金計画を見ながら、できるタイミングを考えておくことも必要だと思います。
資金計画も、急に準備できるものではありません。場合によっては、運転資金として融資を受けることもできますが、できる限り早いうちから修繕費を積み立てておくことが大切です。
また、サブスクのように一定額のメンテナンス費用を支払い、10年ほどかけて必要な箇所から順番に修繕していく契約スタイルもあります。
大規模修繕費用は、内容によって資産計上になる部分と、経費計上になる部分に分かれることがあります。一方で、メンテナンスとして毎月支払う形であれば、経費として処理しやすく、大きなお金が一度に動かない点をメリットに感じる家主さんもおられます。
ただし、契約期間が長くなる分、途中で金額が変わる可能性や、どこまでが契約に含まれるのかは、事前に確認しておいた方がよいと思います。
最後に
建物は、建てた瞬間から少しずつ古くなります。だからこそ、家主は建物の状態と資金を見ながら、どこで手を入れるのかを判断していく必要があります。大規模修繕は、単なる修理ではなく、その物件をこれからどう守り、どう活かしていくかを考える機会でもあると思います。
