家賃を上げたいと思ったときに考えること【後編】|新しく募集する場合
2026.06.06
新しく募集する賃料は、周辺相場だけでなく、物件ごとの設備、立地、築年数、リフォーム費用、初期費用、空室期間、資金繰りまで含めて判断する必要があると述べています。最初の設定が重要で、強気すぎる価格は空室損につながる一方、安すぎる設定も後から上げにくいとしています。
また、決まりにくい物件ではADや募集条件の調整も検討し、管理会社に任せきりにせず家主自身が方針を持つべきだとしています。高くても納得感があり、選ばれる水準を見極めることが大切だとまとめています。
前回は、すでにご入居されている方の賃料、いわゆる継続賃料について書きました。
今回は、退去があって、新しく募集する場合の賃料について書きたいと思います。
前編はこちら:家賃を上げたいと思ったときに考えること【前編】|既存入居者さんの場合
最近の家賃の上がり方を見ていると、正直、少し驚くことがあります。
以前なら「このくらいかな」と思っていた賃料より高く募集されていて、しかも実際に決まっている。
そういうことも増えてきたように感じます。
周辺相場だけで家賃は決められない
もちろん、家賃は立地、間取り、広さ、築年数である程度決まってきます。
都心に近ければ高い。
人気の路線、人気の駅であれば高い。
駅から近ければ高い。
これは分かりやすい話です。
ただ、他の物件がこれくらい上げているから、うちも同じように上げよう、という考え方だけでは、なかなかうまくいきません。
同じ駅、同じような間取り、同じくらいの築年数でも、物件は一つ一つ違います。
鉄筋コンクリートなのか、鉄骨なのか、木造なのか。
エレベーターがあるのか。
オートロックがあるのか。
インターネット無料なのか。
宅配ボックスがあるのか。
駐車場があるのか。
室内の内装も違いますし、設備の状態も違います。
共用部の雰囲気も違います。
だから、同じ駅で同じ広さだから同じ家賃、とは簡単には言えません。
新しく募集する家賃を決めるときは、近隣の募集物件を見ながら、自分の物件がどの位置にあるのかを考える必要があります。
周りより高くしても選ばれる物件なのか。
同じくらいなら決まりそうなのか。
少し下げないと厳しいのか。
ここを見ないまま、ただ強気に出すのは危ないと思います。
新しい募集では最初の賃料設定が重要
でも、今は家賃が上がっている時代です。
家主としては、できるだけ高く貸したい。
一度決まれば、その家賃が長く続くこともあります。
最初から低く出しすぎると、あとから上げることはなかなかできません。
だから、新しく募集するときの賃料設定は、最初がとても大事です。
ただ、家賃を決めるときに見るのは、相場だけではありません。
家主さんは、いろいろなものを同時に見ないといけません。
近隣の相場はどうか。
競合物件はいくらで出ているのか。
自分の物件は、そこに勝てる状態なのか。
リフォームにいくらかけたのか。
その分を家賃でどこまで回収したいのか。
逆に、今回はあまり手を入れていないから、そこまで強気には出さなくても良い。
他の物件にはある設備が、うちにはない。
そこは負けるから、あの物件より高くはできない。
でも、駅から近い分、このくらいならいけるかもしれない。
そうやって、一つ一つ比べながら考えていきます。
ADも含めて募集条件を考える
ADもその一つです。
ADは、仲介業者さんへの特別な広告料です。
入居者さんには見えにくい部分ですが、募集の現場では大きいと思います。
決まりやすい物件であれば、ADをたくさんつける必要はないかもしれません。
駅が近い、築浅、設備がいい、家賃に納得感がある。
そういう物件は、無理に広告料を増やさなくても決まることがあります。
でも、決まりにくい物件もあります。
築年数が古い。
駅から少し遠い。
間取りにクセがある。
競合が多い。
何か少し決め手に欠ける。
そういう場合には、ADを考えることもあります。
例えば、家賃が3万円のお部屋だとします。
仲介手数料が1ヶ月分、ADが1ヶ月分だったとしても、仲介業者さんに入る金額は合計6万円です。
家主さんから見ると、6万円で十分と思うかもしれません。
でも、仲介業者さん側から見ると、案内して、申込を取って、契約して、鍵渡しまでして、その金額です。
店舗の家賃、人件費、広告費、固定費もあります。
そう考えると、家賃の低い物件ほど、仲介業者さんに動いてもらうための工夫が必要になることもあります。
もちろん、何でもADを積めばいいという話ではありません。
敷金や礼金が入る物件なのか。
初期費用をほとんどいただけない物件なのか。
ADだけが出ていく形になるのか。
そこによって、家主側の手残りは全然変わります。
多少費用をかけても早く決めたいのか。
急がないので、決まる時に決まればよいのか。
ローンや資金繰りに余裕があるのか、ないのか。
その状況によっても判断は変わります。
つまり、家賃を決めるというのは、ただ「周りが上がっているから上げる」という話ではありません。
相場、競合、リフォーム費用、設備、初期費用、AD、空室期間、資金繰り。
そういうものを同時に見ながら、どこなら勝負できるのかを考える。
家主さんは、そこを人任せにしすぎてはいけないと思います。
管理会社さんや仲介会社さんに相談することは大事です。
でも、最後にその家賃で経営するのは家主さんです。
だからこそ、家賃を決めるときには、数字だけでなく、その後ろにある条件や費用まで見ておく必要があると思います。
高すぎる家賃は空室損につながる
ただ、高く出しすぎると、やはり決まりにくくなります。
決まらない期間が長くなると、その間の家賃は入りません。
例えば、月8万円のお部屋であれば、1ヶ月空けば8万円の空室損です。
2ヶ月空けば16万円です。
それを考えると、ただ高く出せばいいというものでもありません。
大切なのは、家賃を上げても、ギリギリ決まるところを探すことだと思います。
借りる方が見たときに、
「安いとは言えない」
「前より高くなっている」
「でも、今はどこも高い」
「この駅で、この距離で、この間取りなら、まあ仕方ないかな」
そう思っていただけるところ。
高いけれど、納得できる。
安くはないけれど、選ぶ理由がある。
そのあたりの見極めが大切なのだと思います。
管理会社に任せきりにしない
ただ、これは本当に難しいです。
日頃からご自身で賃料設定をされていない家主さんにとっては、近隣相場を見ても、どこをどう判断したらよいのか分かりにくいと思います。
その場合は、管理会社さんや仲介会社さんに相談されるとよいと思います。
ただし、相談するときには、家主としての考えをきちんと伝えた方がいいと思います。
「とにかく早く決めたいです」
という場合と、
「すぐに決まらなくてもいいので、まずはこの家賃で様子を見たいです」
という場合では、募集の出し方も変わってきます。
管理会社さんは、反響がない、内見がない、決まらない、という状態を嫌がることがあります。
早く決まれば安心ですし、家主さんからもいろいろ言われずに済みます。
だから、管理会社さんが少し安全な家賃をすすめるのも、ある意味では自然なことです。
でも、家主さんとしては、そこで任せきりにしないことが大事だと思います。
空室期間をどこまで許容できるのか。
家賃をどこまで取りたいのか。
早期成約を優先するのか。
少し時間がかかっても賃料を優先するのか。
そこは、自分で決めておく必要があります。
もちろん、何ヶ月も反響がないのに、ずっと同じ条件で出し続けるのは考えものです。
その場合は、家賃だけでなく、写真、掲載内容、設備、初期費用、ターゲットが合っているかも見直した方がいいと思います。
決まらない理由は一つではありません。
だからこそ、最初の賃料設定は大事ですが、その後の反応を見ることも大事です。
家賃を上げても選ばれる物件にする
家賃が上がっている時代だからこそ、ただ周りに合わせるのではなく、自分の物件ならどの金額なら選ばれるのかを考える。
そして、その金額で選ばれるために、何を整えるのかを考える。
賃料を上げることは、簡単なことではありません。
でも、建物を維持していくにはお金がかかります。
家主も、ずっと同じ条件のまま、何も負担が増えないわけではありません。
だからこそ、今の時代は、賃料をきちんと見直すことも必要だと思います。
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