家賃を上げたいと思ったときに考えること【前編】|既存入居者さんの場合
2026.06.01
既存入居者の家賃を見直す際の考え方を、更新時期、管理会社との役割分担、周辺相場との違いを踏まえて整理しています。物価や修繕費、金利上昇を背景に、賃料改定の必要性を検討する流れが述べられています。
改定には理由の丁寧な説明と双方の合意が重要で、建物維持や設備修理に必要な費用負担も説明材料になるとしています。既存入居者への配慮と、無理のない範囲での調整の必要性にも触れています。
最近、賃料を上げたいと思っている家主さんも多いのではないでしょうか。
物価も上がっています。
修繕費も上がっています。
人件費も上がっています。
金利も、以前のように低いままとは言えなくなってきました。
そうなると、家主としては、今の賃料のままで本当にこの先も建物を維持していけるのか、考えざるを得ないところがあります。
賃料を上げるといっても、大きく分けると二つあると思います。
一つは、今すでにご入居されている方の賃料を上げること。
もう一つは、退去があって、新しく募集するときの賃料を上げることです。
今回はまず、すでにご入居されている方の賃料、いわゆる継続賃料について書きたいと思います。
継続賃料を見直すタイミング
更新のある地域であれば、更新の3ヶ月前くらいに通知を出すのが自然だと思います。
ただ、関西のように、あまり「更新」という文化がない地域もあります。
普通賃貸借契約で、2年ごとに自動更新。
更新料もいただかない。
そうなると、そもそも入居者さんへ何か通知を出す機会があまりありません。
それでも賃料の見直しをするのであれば、入居された時期から2年ごとのタイミング、つまり契約上の更新時期に合わせて、賃料改定のお願いを出すのがよいのではないかと思います。
管理会社に任せきりにしない
管理会社さんが入っている物件であれば、通知は管理会社さんを通して出すことになると思います。
ただ、ここで少し気をつけないといけないのは、管理会社さんが賃料を決めるわけではないということです。
賃料をいくらにするかを決めるのは、あくまで家主です。
管理会社さんは、家主の意向を入居者さんにお伝えする立場です。
もちろん、管理会社さんに「いくらくらいが妥当でしょうか」と相談するのはよいと思います。
ただ、管理会社さんは入居者さんとも日々やり取りをしますし、クレームやトラブルになることはできれば避けたいと思われるはずです。
ですので、どちらかといえば、入居者さんが受け入れやすい金額を提案されることもあると思います。
それが悪いということではありません。
ただ、最終的には家主自身が考えて決める必要があります。
既存入居者の賃料は募集賃料と同じではない
では、何を参考に賃料を決めるのか。
当然、今募集されている近隣の物件や、同じ建物の空室募集賃料を参考にすることはあります。
ただ、既存の入居者さんの賃料、いわゆる継続賃料は、新しく募集するお部屋の賃料とまったく同じにするわけにはいかないことも多いです。
長く住んでいただいている。
その間に、クロスを貼り替えたわけでもない。
床や設備が新しくなったわけでもない。
新しい入居者さんにお貸しする部屋とは、状態が違う場合もあります。
ですので、今の募集賃料がこの金額だから、既存の方もすぐに同じ金額へ、という考え方は少し乱暴かもしれません。
住み続けていただいていること。
お部屋の状態。
今までの賃料。
近隣相場。
そういうものを見ながら、無理のない範囲で決めていくことになると思います。
賃料を上げる理由をきちんと伝える
そして、賃料を上げると決めたら、なぜ上げるのかをきちんと伝えることが大事です。
ただ「近隣相場が上がっています」だけでは、入居者さんには伝わりにくいかもしれません。
建物を維持するには、本当にいろいろな費用がかかります。
エレベーターがある物件なら、エレベーターの点検やメンテナンス。
立体駐車場がある物件なら、その保守。
共用部の清掃。
消防設備。
給水設備。
小さな修理もあります。
鍵が悪くなった。
網戸が破れた。
共用部の照明が切れた。
排水の調子が悪い。
そういう細かなことも、積み重なると決して小さくありません。
また、室内の設備もあります。
エアコン、給湯器、換気扇、水栓など、設備として設置しているものが壊れた場合、多くは家主負担で交換や修理をします。
今は、その品物自体の値段も上がっています。
工事をしてくださる職人さんの人件費も上がっています。
材料費も上がっています。
固定資産税が上がった物件もあるでしょうし、あまり変わらない物件もあると思います。
ローンを利用して物件を運営している家主さんであれば、金利の影響もあります。
金利が少し上がるだけでも、借入金額が大きければ、年間で数十万円、数百万円。
物件をたくさん持っている方であれば、1,000万円単位で負担が増えていることもあるかもしれません。
これは家主の手残りに直接関わります。
家主も、ただ賃料を上げたいから上げたいのではありません。
物件をきちんと維持していくため。
設備が壊れたときに直せるようにするため。
清掃や管理を続けるため。
建物の価値を落とさないため。
そういう理由があるのだと思います。
もちろん、入居者さんにも生活があります。
家賃が上がることを喜ぶ方はいません。
すぐにご理解いただける方もいらっしゃいます。
「今は何でも上がっていますからね」と言ってくださる方もいます。
でも、上げられたくない方も当然いらっしゃいます。
払いたくない方も、払えない方もいらっしゃいます。
そこは、家主としても分かっておかないといけません。
それでも、どうしても賃料の改定が必要だと思うなら、感情的にならず、丁寧に説明することです。
継続賃料の改定には双方の合意が必要
ただし、継続賃料の場合、最終的には双方の合意が必要になります。
家主が上げたいと言ったから、必ず上がるわけではありません。
もし公の場できちんと争うとなれば、不動産鑑定が必要になることもあります。
でも、不動産鑑定には大きな費用がかかります。
家主にとって、数千円の賃料改定のために鑑定を取るというのは、現実的ではないことも多いです。
だから、上げたいけれど上げられない。
そういうことも起こります。
今の借家法では、家主の一方的な都合だけで簡単に賃料を上げることはできません。
その点は、家主側も理解しておく必要があります。
ただ、個人的には思うことがあります。
もちろん、入居者さんの立場も分かります。
毎月の支出が増えるのは嫌ですし、不安もあると思います。
でも、もし本当に払える範囲であれば
例えば、月に1,000円、2,000円、3,000円くらいの話であれば。
コンビニでお菓子を一つ買う。
お弁当やパンを一回買う。
そういう金額の一回分、二回分で済むような負担であれば、家主さんも大変なので、少し協力してあげてほしいなと思うこともあります。
建物を維持するための賃料見直し
建物は、放っておいても勝手に維持されるものではありません。
誰かが掃除をして、点検をして、修理をして、費用を払って、ようやく今の状態が保たれています。
賃料の値上げは、入居者さんにとっては負担です。
でも、家主にとっても、物件を維持していくための必要なお願いであることがあります。
だからこそ、金額だけを伝えるのではなく、なぜお願いするのか。
そこをきちんと伝えることが大事なのだと思います。
後編はこちら
退去があって新しく募集する場合の賃料設定については、後編で詳しく書いています。
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